内定辞退/内定承諾後辞退は法律上いつまでに申し出るべきか|法的根拠とともに解説

二人の人が握手をしている

就職・転職活動には「内定辞退」がつきものです。1社しかエントリーしていない人は珍しいでしょうから、複数の企業から内定をもらうことも当たり前のように起きるでしょう。

まじめな方や心配性な方ほど、ぎりぎりまで就職先を悩んでしまい、内定辞退を言い出しづらい状況に陥ってしまいがちです。その結果、「内定辞退はいつまでに申し出るべきなのか」「内定承諾後に辞退するのはまずいことか」などの悩みをお持ちの方をよく見掛けます。

今回のコラムでは、内定/内定承諾後の辞退は法律上いつまでに申し出るべきかについて、東証一部上場企業の元人事担当者の見解をもとにご説明いたします。

どんな人にこのコラムを読んで欲しいか

  • 内定を複数持っている人
  • 内定承諾後に辞退を考えている人

結論:入社予定日の2週間前までに申し出れば法律上問題ない

さっそく結論ですが、入社予定日の2週間前までに申し出れば、法律上問題ありません。これは、内定辞退だけでなく、内定承諾後の辞退でも同様の考え方となります。

ではなぜ、このように考えることができるのか、法的根拠とともに解説していきましょう。

採用内定通知の法的意義

ここでは、企業が応募者に採用内定を通知する行為にどのような法的意義があるのかご説明します。

一般的な採用/就職活動においては、①企業による入社者の募集、②応募者による応募または採用選考試験の受験、③企業による採用内定通知の発信という過程を踏むこととなります。

実は、今回のテーマである「企業による採用内定通知の発信」に関して、法律における規定は存在していませんが、①~③の行為はそれぞれ次の法的意義を持つと判例によって判断されています。

判例による判断

採用過程 判例による判断(法的意義)
①企業による入社者の募集 労働契約申し込みの誘引
②応募者による応募または採用選考試験の受験 労働者による申し込み
③企業による採用内定通知の発信 使用者による契約の承諾
上記判断は、森尾電機事件[東京高等裁判所判決 昭和47年3月31日]で判示されて以降、大日本印刷事件[最高裁判所第二小法廷判決 昭和54年7月20日]、電電公社近畿電通局事件[最高裁判所第二小法廷判決 昭和55年5月30日]の2つの最高裁判所の判決においても踏襲されています。

上記の通り、判例によれば、「企業による採用内定通知の発信」は労働契約の申し込みに対する承諾であると解されています。つまり、最終的に応募者が内定を承諾するか否かによらず、内定通知発信の時点ですでに応募者と企業の間で労働契約が結ばれていると解釈されているのです。
※厳密には、試用労働契約または見習社員契約といった位置づけの労働契約が成立すると判示されています。

したがい、通常の退職のステップを踏むことで、法律上問題なく内定/内定承諾後辞退が可能となります。

退職のステップ

退職については民法第627条に記載があり、退職予定日の2週間前までに申し出ることで自由に退職(労働契約の解約)することができます。

内定/内定承諾後辞退をするにあたっては、入社予定日までに退職できれば良いわけですから、入社予定日の2週間前までに申し出ればよいという結論に至ります。

内定先企業から損害賠償請求を受ける可能性

上記の通り、内定/内定承諾後辞退は退職と捉えられるわけですから、労働者の自由であり、違法とみなされる可能性は極めて低いと言えます。

ただし、あまりにも信義則に反する行為と判断された場合には、内定先企業から損害賠償請求を受ける可能性はゼロではありません。

そういったリスクを回避するためにも、内定辞退を決意した場合にはすみやかに申し出、誠意ある伝え方をしましょう。

内定辞退を伝える方法

内定辞退を申し出る方法に法的制約はありません。ただし、内定承諾後で入社予定日間近の辞退の場合には、上述のリスクを少しでも抑えるため、できるだけ誠意が伝わる手段を選ぶべきです。

また、企業の人事担当者からすれば、少しでも早く辞退者の存在を知りたいと考えていますので、電話で謝罪とともに連絡することが無難な選択と言えます。

さいごに

今回のコラムでは、内定/内定承諾後辞退は入社予定日の2週間前までに行えば、法律上問題ないということをご説明しました。

より良いキャリアの選択をすべく、内定辞退を恐れずに就職/転職活動に注力していただければ幸いです。