就職活動を始めたばかりの学生にとって、OB訪問を行うのは少しハードルが高いように感じますよね。「OB訪問って効果ありそうだよな」「やってみたいけどタイパが良くなさそう」「絶対にやるべきでなければやらなくていいよね」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、OB訪問をすることの大切さについて、大手企業の採用担当経験者が解説いたします。
目次の前にお伝えします。OB訪問は絶対に行ってください。OB訪問は就職活動における最もコスパの良い効果的な活動だと思います。
筆者の情報
どんな人にこのコラムを読んで欲しいか
- 就職活動前/中の学生
- 第二新卒で転職活動を行う方
OB訪問とは
念のため、OB訪問とは何かご紹介しておきましょう。
自信が興味を持っている(選考応募予定の)業界や企業で実際に勤務する方に、直接話を聞くこと。コロナ禍以降は、オンサイトで話を聞くだけでなく、オフサイトで行う場合もある。
OB訪問を行う目的
OB訪問を実施する目的は、次の2つです。
- 訪問相手の属する企業や業界の一歩踏み込んだ情報を得る
- エントリーシートや採用面接における「志望動機」に箔をつける
「そんなの当たり前じゃないか」と思われましたか?そうですよね、そもそも就職活動自体が、上記2つを経て希望する企業に就職することを目的としているでしょう。しかし、ここでお伝えしたいのは、OB訪問が最もコスパが良く効果的な活動だということなのです。具体的に解説していきましょう。
訪問相手の属する企業や業界の一歩踏み込んだ情報を得る
特定の企業や業界の情報を収集するためには会社説明会に参加したり、ホームページを閲覧したり、業界研究本を読んだりと方法は多岐にわたります。
しかし、これらから入手できる情報は、上っ面しか触れていなかったり、悪い面を見せないようにしていたりするケースが多くみられます。
一方、OB訪問で得られる情報は、実際に当該企業で就業実績のある方のフィルターを通した情報であったり、直近感じている情報であり鮮度が高いものなのです。つまり、良い面もあれば悪い面についても把握することができます(説明会に参加したときは志望度がぐんっと上がったのに、OBに話を聞いたら志望度が一気に下がったというような話はよく聞きます)。
企業担当者から見ても「この学生は正確性の高い情報をもとに弊社を志望している」と思ってもらうことにつながります。
また、その訪問相手は少なくとも当該企業に認められて入社をしている社員ですので、その方を知ることで、選考を通過するヒントが見つかるかも知れません。
エントリーシートや採用面接における「志望動機」に箔をつける
OB訪問を通して、人事や面接官に刺さるネタを見つける/作ることができます。
どういうことかというと、エントリーシート作成や面接時には必ず志望動機を問われますが、この問いに対する回答に箔をつけることができるのです。
そもそも志望動機に答えはありませんし、志望動機が弱かったところで、入社後に高い能力を発揮して活躍してくれる可能性は大いにあります(そういう意味では、志望動機を聞くことにどれだけの必要性があるか、という議論もありますが、ここでは置いておきます)。
しかしながら、面接官の多く(特に1次面接で出てくる若手社員や人事担当者)は、志望動機にどれだけ納得性・一貫性があるか、熱意を感じるかといった観点で評価をしていることがよくあります。
また、他の質問において、様々な観点でコンピテンシーや能力を測ろうとしますが、別の記事でもお伝えしている通り、ポテンシャル採用が基本である新卒一括採用では、学生時代に表面的に表れる能力や結果は就職後の評価に直結しないことを前提としています。その代わりに(という言い方が正しいかは分かりませんが)、パーソナリティの面で、既存社員と同じ価値観で活躍できるかどうかといった視点を評価軸として持っている場合があります。
さて、これらの問い・評価ポイントで面接官に刺さる答えとはどのようなものでしょうか。
それは、過去の経験やコンピテンシーと自社への志望動機が結びついているような方です。ただし、これに該当する応募者はほとんど見かけません。例えば、中学生の頃からなりたい職種が決まっていて、それに向かって考え行動してきた方。反対に、過去からやりたいこと・なりたい職種が決まっていたわけではないが、自己分析をした結果、過去の経験が当該業界や職種にのみ繋がっていてとても説得力がある方、などがこれにあたります。
残念ながら、就職活動を開始してから過去の経験を変えることなどできませんので、やろうと思ってできることではありません。さらには、自己分析してみたものの、「カッコいいから」や「給料が良いから」、「漠然とやってみたいから」程度の志望動機しか出てこない方もいるでしょう。しかし、これでは面接官に刺さりません。
そこで使えるのが、OB訪問した人だけが用いることのできる魔法の言葉「御社(貴社)の人に惹かれました。」です。
この言葉を聞くだけで、社員にコンタクトをとるくらい自社に興味を持っていて積極性がある印象を与えることができます。また、自社の社員に会った上で入社を希望しているわけですから、極端に言えばその社員に共感している・同じ価値観を持っている・同じ方向を向くことができると判断させることができるのです。このように、OB訪問をしたという事実だけで、志望動機の納得性が高まるのです。
この言葉を使いたいがためにOB訪問を行うことは本質的ではないという捉え方もあると思いますが、
さいごに
本コラムでは、OB訪問の大切さについてご説明しましたが、実際の就職活動においては、応募しているすべての企業のOBに訪問することは不可能だと思います。
実現可能な範囲でいうと、就職活動初期においては志望する業界や企業を絞ることに重きをおいて、ある程度固まってきた段階で1~2社に狙いを定めてOB訪問すると良いでしょう(志望する業界を絞るためにOB訪問をするというのもありですが)。
ちなみに、同企業の違うOBに複数回訪問することも効果的です。競合の情報もしっかりと集めたうえで自社に応募してくれているという事実が、志望動機の納得性や熱意の高さをアピールすることにつながるでしょう。