多くの企業では、転職面接の最後に「何か質問はありますか?」と逆質問を促します。それまで順調に進んでいた面接にもかかわらず、最後の逆質問の時間で不合格と判断されてしまうこともあるでしょう。
さて、転職活動を行っている方は、当然面接の準備・対策をされていると思いますが、逆質問の準備も適切にできているでしょうか。「逆質問の時間は何を見られているの?」「マナーやNGな行動はあるの?」「具体的に何を聞くべきなのか?」と悩んでいる方も多いと思います。
そこで今回の記事では、採用面接において面接官が逆質問を行う意図や失敗しないためのテクニックについて、東証一部上場企業の元人事担当者が解説いたします。実は逆質問についても、通常の面接と同じように準備・対策することが可能です。
この記事で得られる情報
- 面接官が逆質問を行う意図
- 逆質問におけるNGな言動
- 逆質問で成功するための具体的なアクション/お手本質問
面接官が逆質問を行う意図
面接官が逆質問を行う意図は、以下5つのパターンに分類されます。逆質問に正解はないとは言いながらも、このような意図を持っているのです。
これらを事前に理解しておき、実際の逆質問の場においては焦ることなく、面接官が求めるアクションを起こすようにしましょう。
- 候補者の疑問を解消するため
- 候補者の目の付け所(興味、考え方、そこに至るバックグラウンドなど)を知るため
- 候補者の意欲を測るため
- 会社の魅力をアピールするため
- 形式的に行っている(時間が余ってしまった)
候補者の疑問を解消するため
候補者が気になっていることに対してピンポイントで回答することで、志望度を高めさせるというものです。また、候補者の疑問を解消することで企業理解を深めさせ、入社後のミスマッチを防ぐ狙いがあります。特に知名度があまり高くない企業ほど、この意図で逆質問の時間を長く確保する傾向があります。
候補者の目の付け所(興味、考え方、そこに至るバックグラウンドなど)を知るため
候補者が、会社のどこに(経営方針?事業内容?働き方?給与?)興味を持っているのか、また、どのようなバックグラウンドで、そこに興味を持つに至ったのかを知る狙いがあります。もちろん、通常の質問の中でも探ろうとしますが、0から1を生み出させる逆質問だからこそ、候補者の色が見えてくることがあります。
候補者の意欲を測るため
転職活動中の皆さんは、当然ですが複数社を並行して応募していると思います。このことは、企業の面接官も承知しています。そのうえで、複数社の中で自社はどの程度の志望度なのかを探る狙いがあります。
会社の魅力をアピールするため
一つ目の「候補者の疑問を解消するため」と似た意図ではありますが、応募者に対して自社の魅力をアピールする狙いがあります。面接を通じて、自社に来てほしいという気持ちが強まった応募者に対し、説明会やホームページなどで公開していない情報も含めて、自社の「良い」情報を持ち帰ってもらうためのきっかけとして、逆質問の時間を用意するパターンです。
形式的に行っている(時間が余ってしまった)
面接がサクサク進み、特に面接官側から聞くことが無くなってしまったケースです。そのうえで、早く終了することにバツの悪さを覚え、形式的に何か質問があるか尋ねることが多いでしょう。
逆質問におけるNGな言動
前段でお伝えしましたが、面接官は何らかの意図を持って、逆質問を行っているケースがほとんどです。その意図にそぐわない言動を行ってしまうと、それにより面接の評価が悪くなってしまう可能性が十分にあると言えます。
ここでは、NGな言動の例を紹介しますので、なぜその言動がNGなのか(つまり、どのように面接官の意図にそぐわないのか)をしっかり理解しましょう。
- 「特にありません」
- 容易に入手できる情報について尋ねる
- 処遇、労働条件、福利厚生などについてのみ尋ねる
- 上から目線で質問・意見をする
- 意図のない質問をする
「特にありません」
もっともNGな言動がこちらです。すでにできる限りの策を尽くして、十分な情報を持っている場合を除き、「特にありません」という回答は絶対にしないでください。仮に、十分な情報を持っていたとしても、そのことが、面接官に伝わっていない(アピールできていない)場合も同様です。
面接は選考の場とはいえ、貴重な情報収集の機会でもあります。そのような貴重な機会を活用しない姿勢は、面接官に入社意欲がないと思われてもおかしくありません。また、先ほど述べた通り「候補者の疑問を解消」しようとしている面接官の提案を断ることは、好意を無下にしていると同義です。
では、本当に質問が特にない時にどうすれば良いでしょうか。そういった場合には、後述する「お手本質問」を活用して場をつなぐようにしてください。ただし、本当に入社したい企業なのであれば疑問は尽きないでしょうから、心から質問が「特にない」と感じた時点で、その企業に対しアプローチを続けるべきなのか、今一度考える必要がありそうです。
容易に入手できる情報について尋ねる
企業のホームページや会社説明パンフレット等を事前に調べておけば分かるようなことを、わざわざ面接官に質問するのはナンセンスです。例えば、「御社の強みは何ですか?」「海外拠点はどこの国にありますか?」「どのようなサービスを展開していますか?」などがこれにあたります。
こういった言動は、企業研究を怠っている、つまり入社意欲がないと思われてもおかしくありません。また、社員の生の声を聞ける貴重な機会を活用できていないないという観点でも、すべきではありません。
処遇、労働条件、福利厚生などについてのみ尋ねる
たとえホームページ等で公開されていない情報であっても、処遇や労働条件、福利厚生などの「労働者の権利」部分ばかり尋ねるのは悪印象を与えてしまうかもしれません。
当然、労働者の権利ですので社員になってからは主張するべきだと思いますし、また、就職活動中も非常に気になることだと思います。しかしながら、「会社に貢献してくれる」「価値(Value)を発揮する」人材ではないと判断されるリスクがありますので、尋ね方には十分注意しましょう。尋ね方に自信がない場合には、面接の場で聞くことは避けた方が無難です。
上から目線で質問・意見をする
事前に企業研究をしっかりと行っており、その企業が直面している(あるいは、今後直面する)具体的な課題や置かれた状況を理解している場合にも注意が必要です。
純粋な気持ちで、今後会社としてどのような対応を取るのかを質問することは問題ありませんが、自身の意見を強く主張したうえで質問につなげたり、あるいは現在の企業の動きに対して批判的なニュアンスで意見・質問をすることは避けるべきです。
企業研究への熱意が伝わることは、面接官へのアピールにつながりますが、一方で面接官からすれば「当社を良く知らない人に批判されたくない」という気持ちが先行し、面接全体の印象が悪くなってしまう可能性があります。
意図のない質問をする
面接官は、どのような質問に対しても真摯に対応してくれるはずです。しかしながら、意図のない質問(「これ聞いて何になるんだろう?」と感じる質問)に対しては、「この候補者は何を考えているのだろうか?」と感じながら対応することになります。
こういったケースにおいては、「変わった質問をする面白い人材」とは判断されず、「価値観がずれている人材」や「論理的に物事をとらえて質問できない人材」とマイナスな判断をされてしまう可能性が高いです。
逆質問で成功するための具体的なアクション/お手本質問
逆質問におけるNGな言動は理解できたけど、具体的にどのような質問をするべきかわからない方に向けて、お手本の質問例を、面接官の意図ごとにご紹介します。逆質問は、質問内容の自由度が高いため、何を聞けばよいか迷ってしまいますが、次のお手本質問例をうまくアレンジして活用することで、面接官に好印象を与えられるよう頑張ってください。
ただし、大前提として、「事前にしっかりと企業研究を行ったうえで、純粋に気になっていることを質問する」ことが、情報収集の場を活用するという意味では、もっとも効果的なアクションであることは間違いありません。先ほどご紹介したNG言動を避けながら、ご自身が本当に気になることを質問することができるのであれば、以下のお手本例にとらわれる必要はありません。
逆質問における成功とは?
繰り返しになりますが、逆質問には明確な正解がありません。一方で、面接官側の意図にそぐわない言動は不正解とみなされてしまうことがあります。裏を返せば、面接官の意図に合致する(面接官が意図を達成したと感じる)質問を投げることが、逆質問における成功(正解に近いアクション)だと考えることができます。
面接官の意図と逆質問のポイント
面接官の意図 | 逆質問のポイント | 具体的なアクション/お手本質問 |
候補者の疑問を解消するため | 疑問が解消した旨を伝えることが効果的 | NG言動でない範囲で純粋な質問を複数ぶつける。回答を得た後には、疑問が解消したことによる前向きな気持ちを伝える。 |
候補者の目の付け所(興味、考え方、そこに至るバックグラウンドなど)を知るため | 自身の人柄が伝わるようなエピソードを交えた質問が効果的 | 「前職で●●を経験した際に▲▲を決意し、それ以来休日は■■の専門書を読みスキルアップに努めています。御社の社員様は、どのような方法でスキルアップを行っていらっしゃいますか?また、会社としてスキルアップを支援する制度などはありますでしょうか?」 |
候補者の意欲を測るため | 志望度が高いことを伝えることが重要 | 入社後の姿をイメージした具体的な質問をすることで、入社意欲の高さを印象付けられる。また、自身の思い(やりたい仕事、求める環境など)とのミスマッチを解消しようとする姿勢は好印象である。
「入社後はしっかりとValueを発揮し、2年以内にマネージャーとして活躍したいと考えています。最も若いケースでは、どれくらいの年次の方が役職についておられますか?」 |
会社の魅力をアピールするため | 面接官に、会社のアピールができたと思わせることが重要 | 面接官にたくさん喋らせることを意識する。Yes/Noクエスチョンではなく、面接官ならではの回答を引き出すことができる質問を行うことが効果的。面接官自身のことを気持ちよく語らせる。またその際、面接官の立場(年次、役職、職種など)を意識して質問することで、しっかりと考えている印象を持たせることができる。
「▲▲様は、●●部の主任という立場で、■■をされていると伺いましたが、業務のむずかしさや働きがいについてお伺いできますでしょうか?」 |
形式的に行っている(時間が余ってしまった) | 面接の評価が良い場合には、特にポイントはない。面接の評価が悪い場合には、自分をアピールするような立ち回りが重要 | 「私は▲▲の経験があり、可能であれば入社後も活かしていきたいと考えておりますが、当該ポジションではこういった経験をいかすことはできますか?」 |
まとめ
今回の記事では、採用面接の逆質問で避けるべきNGな言動と、成功のための具体的なアクションを紹介しました。事前の対策を怠らず面接に臨むことで、面接官に好印象を与えることができるはずです。
- 逆質問の内容に明確な正解はない。一方で、不正解は存在する。
- 面接官は何らかの意図を持って逆質問を行っており、その意図にそぐわない言動(不正解)を行うと、面接の評価が悪くなることがある。
- 面接官が逆質問を行う意図を十分に理解し、不正解を避けることで成功に近づけることが可能である。